スポーツ界では日本代表の躍進を耳にすることが増えました。突出したエースが牽引するというより、日替わりのヒーローとチーム力で勝っている印象を受けます。昨年のサッカーのワールドカップから野球のWBC、バスケットと素晴らしい結果を出しています。
チーム競技が盛り上がりを見せる一方で、個人競技の水泳は「世界水泳選手権福岡大会」の結果が振るわなかったようです。選手のレベルも練習環境も世界レベルにあると思われた水泳界ですが、大会終了後にコーチや選手などの組織内の不協和音が漏れ伝わってきたのが象徴的でした。
プロ野球は昔から外国人選手、外国人監督というのは珍しくありませんが、近年力をつけているスポーツも外国人選手と外国人監督が欠かせません。二刀流の大谷翔平選手に至っては、日本人でありながら、投打共に世界のトップにいるという凄さです。
高校卒業後に大リーグ志望をしていた大谷翔平選手ですが、本人にプレゼンをして入団に持ち込んだ栗山監督の信条は「信じて、任せて、感謝する」。この大谷翔平選手を日本ハムに迎え入れるために作成したプレゼン資料が公開されています(コピーですが本物だと思います)。
約30枚のスライド資料に個別事例を紹介しながら、早くからメジャーに行かずに、国内で準備してからいくことを説いています。このプレゼンの結論は次の3点です。
【結論1】
早期渡米と『長期活羅」は今のところ結びつきが確認できず、むしろ、 NPB実績をあげるなかで『野球技術の確立』『人としての自立』を身につけることが、『MLB即戦力』『長期活躍」の可能性を高めている。
【結論2】
若年期海外進出の効果は、競技ごとに違う。日本野球においては、指導力を含む育成環境が世界トップレベルにあり 早くから海外進出する必要性に乏しい。
【結論3】
世界で戦うためには、身体能力を競うやりかたではなく、ストロングポイントとして日本人らしい技術や戦術を会得し、それを発揮することが賢明である。
この中のプレゼン資料で興味深いのは、「アスリートの競技レベル」と「競技環境」の位置付けを示した表です(下記をご参照)。
ワールドカップで大いに盛り上がった「バスケット」と世界水泳で今ひとつだった「水泳」の位置付けが対称的な位置付けにあります。なぜ「バスケット」は活躍できたのかという点に対する回答は上記の【結論3】で示されています。
無論、勝利の要因はそれだけではないのでしょうが、ゲームにおいて苦しい時もチームとして悲壮感が漂うのではなく、何処となく「明るさ」「楽しさ」「信頼感」というものがあるように感じられました。
上記のプレゼン資料と中でイチロー選手に関するコメントがあります。その内容は「イチローは、18歳から渡米してもイチローになれただろうか?」という疑問の投げかけでした。お見事!
今年の夏の甲子園は「高校野球の常識を変える」と明言してきた高校が優勝しました。「巨人の星」のようにモーレツに練習するのではなく、練習の質を重視する。質とは行動の意図や目的意識であり(シンキングベースボール)、監督の指示よりも選手の自主性を優先する。
軍隊式の古い「野球道」を否定するのではなく、「スポーツである野球は、本来、明るいもの、楽しいもの。野球が好きで上手くなりたいなら、一生懸命練習しよう」というエンジョイベースボールというのが甲子園の優勝校のスタイルでした。
1970年代の有名なC Mのキャッチコピーは「モーレツからビューティフルへ」。90年代になっても「24時間戦えますか」でしたし、会社などの組織の中には、今も「モーレツ」意識は残っています。「楽ではないけど、楽しめる」のが目指すところかもしれません。
<まとめ>
やや強引ですが、まとめます。チームを統括する人は、プレイヤーに目指す方向性を示し、各人に期待される役割を明確化し、お互いが意見を交換できる環境を準備する必要があります。
となると、チームの運営に必要なことは、ビジョン、ミッション、ディスカッションではないでしょうか?
なお、同族企業(ファミリービジネス)には、ファミリーとビジネスの2つの世界がありますので、オーナー経営者の皆様ご留意ください。