プジョー家といえば、言わずとも知れたフランスの自動車会社のオーナー一族です。実は、プジョー家がどのような会社やファンドに投資をしているのか、中身を知っています。本コラムで特別に!? ご披露いたします。
①プジョー家の資産運用
といっても、私だけが知っているということではありません。どなたでも凡そのところは調べることができます。なぜならば、プジョー家の資産管理会社の一つは公開会社なのです。会社名は「Peugeot Invest 」です。
「Peugeot Invest 」は「Établissements Peugeot Frères」が過半数を所有する上場会社です。別の資料では「Établissements Peugeot Frères」が「Peugeot Invest 」の80%の株を所有と記載さてれいました。
「Peugeot Invest 」の投資の内訳は、プジョー関係の株式が40%、プジョー以外の会社に対する直接投資29%、パートーナーシップによる共同投資16%、投資信託14%、その他の資産2%です(端数の関係で100%になっていません)。
「Peugeot Invest 」のHPを拝見すると地域分散、業種分散、などの基本的事項を踏まえながら、多様な投資を確認できます(Google翻訳は有難いですね)。200年を超える一族の歴史、運用戦略、チーム、ガバナンス、持続的な発展、などについても説明しています。
「Peugeot Invest 」のHPを見ていますと、フランスの同族会社(ファミリービジネス)の状況が確認できます。いわゆるファミリーオフィスと呼ばれるものですが、プジョー関係以外の株式に45%投資している点に特徴があります。
HPで具体的な銘柄、ファンド名も公表されています。カネにカネを産ませる投資というよりは、信念をもった投資活動ですね。HPには次のように記されています。
「Peugeot Invest の使命は、投資の発展を通じて価値を創造することです。同社は「長期マイノリティ開発投資」を中核事業としています。そのアイデンティティは、プジョー家の価値観、産業および起業家としての経験に基づいて構築されています。」
「プジョー家の価値観、産業及び起業家としての経験」にアイデンティティがあると断言していることに同族会社(ファミリービジネス)としての誇りを感じさせます。
②プジョー家の出来事と役割
プジョー家の出身はフランスのモンベリアールという場所で、ドイツ国境(15世紀から18世紀まで、ドイツのヴュルテンベルク家が領有した町)近くにあります。
ロベール・プジョー(1873〜1945)は相続にあたり、一つの規則を作ります。それは、会社の株式を承継するのは息子だけで、娘と娘の配偶者(夫)には株を渡さないというルールです。
無論、フランスの法律は男女を問わず均等相続ですので、女性の相続分は会社が買い取るルールとしています。しかし、娘の一人が反旗を翻したのでした。自分に株を渡すように求めて裁判を起こし、結果的にファミリーから排除されることになります。
その後も誘拐事件(身代金を払って、子供は無事でした。犯人も後に捕まります)などの幾多の試練を乗り越えて、今日にいたります。
フランスの3大自動車メーカーはプジョー、ルノー、シトロエン。ルノーは第二次大戦後に政府に接収され同族企業(ファミリービジネス)ではなくなり、シトロエンは今やプジョー傘下にあります。
なお、プジョー社の企業統治体制は、ドイツ型の執行役会と監査役会から構成していました。執行役会のトップは親族外から専門経営者を招き、監査役会はプジョー家同族が担う体制です。
監査役会を通じて、プジョー家が経営者を氏名するなどの経営上の長期戦略に関する重要な意思決定につき監督をすることで、実質的に会社をコントロールしていました。
1980年代の第二次オイルショック後にプジョーの資本増強が必要になった際、ファミリーに増資に応じる資金がなかったため、「Peugeot Invest 」を上場して資金調達をします。このため、今日、プジョー家の資産運用の実態が垣間見ることができるのでした。
その後、2021 年 1 月にフィアット・クライスラー・オートモービルズと経営統合し、ステランティス N.V.(本社:オランダ)となります。この結果、プジョー社は、現在はステランティス N.V.の一部門となっています。
③まとめ
日本の資産管理会社もこれから変わっていくはずです。プジョー家のようにファミリーとしての価値観を守りながら、会社経営、資産運用を行う流れです。
そのためにも、何より必要なのはファミリーを束ねる仕組みではないでしょうか。ファミリーといえども、一義的に決まるものでもありません。ファミリーに応じたオーダーメードな仕組みづくりが必要です。
その仕組みづくりの準備はできていますか?